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【これだけは押さえたい!】フリーランス新法の基本

フリーランスの基礎知識

2023年5月12日に公布されたフリーランス新法。

フリーランスの安定的な労働環境のために制定されたこの法律が、どのように自分と関わってくるのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。

今回はフリーランス新法の概要とどういったケースにこの法律が適用されるかについて書きたいと思います。

この記事の対象読者は以下のような方を想定しています

  • フリーランス新法の概要を知りたい
  • フリーランス新法が自分とどのように関わるのか知りたい

この記事を読むことで以下がわかるようになります

  • フリーランス新法の概要
  • フリーランス新法が誰に適用されるのか
  • フリーランス新法がどういったケースに適用されるのか

フリーランス新法とは

フリーランス新法は正式名称を「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」と言い、2023年4月28日に可決され、同5月12日に公布されました。

厚生労働省は、フリーランス新法の目的を以下のように掲げています。

この法律は、フリーランスの方が安心して働ける環境を整備するため、
①フリーランスの方と企業などの発注業者の間の取引の適正化 と
②フリーランスの方の就業環境の整備
を図ることを目的としています。

厚生労働省、「フリーランスの取引に関する新しい法律ができました」、https://www.mhlw.go.jp/content/001206833.pdf

このように、フリーランスの働く環境の整備が目的とされています。

働き方の多様化とともに年々フリーランスとして働く人は増えています。しかしこれまで、フリーランスは会社に勤務している人と比べて、労働環境の保護が十分ではありませんでした。

例えば、「一方的に取引をキャンセルされた」、「業務の発注者から期日内に報酬が支払われなかった」、「ハラスメントを受けた」などのトラブルが多く起こっていました。これは、「個人」であるフリーランスと、「組織」である発注事業者との間には、交渉力などの格差が生じるためと考えられます。

そういった背景があり、今回の法案が可決されました。

フリーランス新法が施行されるのは、公布の日から1年6か月以内と定められているので、2024年の秋頃には施行される予定です。

この法律は、フリーランスに対して業務委託を行う業者に対して、取引条件の明示や60日以内の報酬 支払などを義務付けています。

フリーランス新法の対象者

フリーランス新法における「フリーランス」及び、フリーランスに対して業務委託を行う「発注事業者」は以下のように定義されます。

【フリーランス新法の対象者】
◆フリーランス:業務委託される側の事業者で、従業員を使用しないもの ※法律上の正式名称は「特定受託事業者」
◆発注事業者:フリーランスに業務委託をする事業者 ※法律上の正式名称は「特定業務委託事業者(従業員を使用するもの)」、「業務委託事業者(従業員を使用しないもの)」

一般的に「フリーランス」と言うと、従業員を使用している場合もありますが、今回のフリーランス新法における「フリーランス」に該当するのは従業員を使用しない事業者のみです。

また、「発注事業者」については、従業員を使用しているかどうかによって、どの条文が適用されるかが変わるので注意が必要です。

ここで言う「従業員」は一時雇用の者は含まれず、「週労働20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる者」を言います。

さらに、以下のような取引は対象外です。

【フリーランス新法の対象にならない取引】
◆BtoC(事業者対消費者)の取引
◆業務委託ではない、単純な売買

つまり、事業者同士の業務委託のみ、対象になるということです。

フリーランス新法の内容

フリーランス新法では、どちらかというと立場の弱いフリーランスが、発注事業者との取引において不当に不利益を被ることがないよう、以下の内容を定めています。

  • 書面等による取引条件の明示
  • 報酬支払期日の設定・期日内の支払
  • 禁止事項
  • 募集情報の的確表示
  • 育児介護等と業務の両立に対する配慮
  • ハラスメント対策に係る体制整備
  • 中途解除等の事前予告・理由開示

それぞれ詳しく解説します。

書面等による取引条件の明示

業務委託をした場合の、書面等による「委託する業務の内容」「報酬の額」「支払期日」等の取引条件を明示すること

厚生労働省、「フリーランスの取引に関する新しい法律ができました」、https://www.mhlw.go.jp/content/001206833.pdf

発注事業者は、フリーランスに対して業務を発注する際に、「委託する業務の内容」「報酬の額」「支払期日」などの取引条件を明示することとなりました。

この「取引条件の明示」についてのみ、従業員を使用しない発注事業者にも適用されます。この他の内容は、従業員を使用する発注事業者のみに適用されます。

具体的な明示内容は公正取引委員会規則に委任されているため、今後の発表を待つことになりますが、取引上の基本的な事項については明示が義務付けられることは覚えておくと良いでしょう。

明示の方法としては①書面、②メール等の電磁的方法のどちらかで提示すれば良いこととなっています。

報酬支払期日の設定・期日内の支払

発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内の報酬支払期日を設定し、期日内に報酬を支払うこと

厚生労働省、「フリーランスの取引に関する新しい法律ができました」、https://www.mhlw.go.jp/content/001206833.pdf

フリーランスへの報酬支払が不当に先延ばしされないようにするために定められているのが、納品から60日以内での支払期日の設定です。納品から60日以内であれば、任意の期日を設定することができます。

これによって、いつまでも報酬が支払われない、といったトラブルを回避できると考えられます。

禁止事項

フリーランスに対し、継続的業務委託をした場合に法律に定める行為をしてはならないこと

厚生労働省、「フリーランスの取引に関する新しい法律ができました」、https://www.mhlw.go.jp/content/001206833.pdf

これは、発注事業者がフリーランスに対して「継続的に業務を委託する」場合のみに適用されます。長く受発注関係が続くほど、経済的依存度があがり、発注業者側から不当な扱いを受けやすくなる傾向があるためです。

以下のような禁止事項が制定されています。

【禁止事項】
◆受領拒否:フリーランスに責任がないのに、納品を受け付けないこと
◆報酬の減額:フリーランスに責任がないのに、もともと決まっていた報酬額を減額すること
◆返品:フリーランスに責任がないのに、納品されたものを返品すること
◆買いたたき:通常支払われるべき報酬より著しく低い報酬を定めること
◆購入・利用強制:正当な理由なしに、発注業者指定の物を強制的に購入させること
◆不当な給付内容の変更、やり直し:フリーランスに責任がないのに、発注内容の変更やキャンセルを行なったり、納品後の追加作業を要求する場合にその費用を発注業者が負担しないこと

このように、フリーランスに責任がないのに不当な要求をされることがないようにと、さまざまな禁止事項が明記されれています。

募集情報の的確表示

広告などにフリーランスの募集に関する情報を掲載する際に、
虚偽の表示や誤解を与える表示をしてはならないこと
内容を正確かつ最新のものに保たなければならないこと

厚生労働省、「フリーランスの取引に関する新しい法律ができました」、https://www.mhlw.go.jp/content/001206833.pdf

当然の話ですが、フリーランスを募集する広告に虚偽の内容や誤解を与える内容を記載してはならないことと明記されています。また、もともとは虚偽ではなかった内容でも、最新の情報に更新していなかったために結果的に虚偽になってしまう場合も考えられるでしょう。そういったことのないよう、情報を最新のものに保つことも定められています。

この規定は、募集情報と実際の取引条件がが異なることによる発注業者とフリーランスの間でトラブルが生じることを防止することを目的としています。

例えば、以下のようなケースが本規定に対する違反行為となります。

  • 実際の報酬額より高い報酬額を記載する
  • 実際とは異なる企業名で募集する
  • すでに募集を終了しているにも関わらず掲載を続ける

育児介護等と業務の両立に対する配慮

継続的業務委託について、フリーランスが育児や介護などと業務を両立できるよう、フリーランスの申出に応じて必要な配慮をしなければならないこと

厚生労働省、「フリーランスの取引に関する新しい法律ができました」、https://www.mhlw.go.jp/content/001206833.pdf

継続的に業務委託を行う場合に、妊娠・出産・育児及び介護と業務を両立することができるよう、発注事業者はフリーランスからの申出をもとに必要な配慮をしなければならないと定められています。

また、継続的に業務委託を行うわけではないケースについては、上記配慮をするように「努めること」が定められています。継続的でない場合は、義務ではなく努力義務ということです。

これは、継続的に業務委託を行うケースの方がフリーランスの発注事業者に対する依存度が高まると考えることができ、育児や介護と業務の両立をする上で、発注事業者からの配慮がより重要となるためです。

【「継続的業務委託」と認められる期間】
「継続的に業務委託が行われている」と判断される期間は、現時点では6か月間とされる、という案が出ています。

具体的な配慮内容としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 妊婦健診を受けられる時間を確保する
  • 必要に応じて就業時間を短縮する
  • オンラインでの業務を可能にする

ここで注意したいのが、この配慮義務は、フリーランスからの申出内容をそのまま発注事業者が認めなければならないとは定められていないことです。あくまでも申出をもとに可能な配慮をすることのみが義務付けられています。

ハラスメント対策に係る体制整備

フリーランスに対するハラスメント行為に関する相談対応のための体制整備などの措置を講じること

厚生労働省、「フリーランスの取引に関する新しい法律ができました」、https://www.mhlw.go.jp/content/001206833.pdf

発注事業者は、フリーランスに対するハラスメント行為について、必要な対応ができるよう、体制を整備しなければならないと定めらています。

具体的には、以下のような対応が考えられます。

  • ハラスメント防止のための研修を行なう
  • ハラスメント関連の相談担当者を決める
  • ハラスメントが発生してしまった場合は迅速に対応する

また、フリーランスがハラスメントの相談を行なった場合について、それによって契約の解除をしたり、不利益を被らせたりしてはいけないということも併せて定められています。

中途解除等の事前予告・理由開示

継続的業務委託を中途解除したり、更新しないこととしたりする場合は、原則として30日前までに予告しなければならないこと

厚生労働省、「フリーランスの取引に関する新しい法律ができました」、https://www.mhlw.go.jp/content/001206833.pdf

継続的業務委託を行なっている場合、契約を途中で解除したり、期間満了後にその契約を更新しない場合は、基本的にはその旨を30日前までにフリーランスに告知しなければならないと明記されています。

また、もしフリーランスからその理由を問われた場合は、理由を開示しなければならないことも併せて定められています。

この内容は、フリーランスが契約の終了をあらかじめ把握し、次の業務に円滑に移ることができるようにすることを目的としています。

困った時は(参考サイト)

最後に、フリーランスとして安心して働くために、参考になる資料やサイトをご紹介します。

フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン(リーフレット)

独占禁止法や下請法に基づいて、フリーランスのさまざまな悩みに回答したリーフレットです。

https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu_files/freelance_leaflet.pdf

例えば、以下のような悩みに回答しています。

  • 契約書の不交付
  • 支払の遅延
  • 報酬額が少ない
  • 納品を受け付けてもらえない

必要な時はぜひ参考にしてみてください。

フリーランス・トラブル110番

フリーランスとして仕事をする中で、契約上や仕事上で困った時に無料で弁護士に相談できる窓口です。

例えば、以下のようなケースでの相談が想定されています。

  • あいまいな契約
  • ハラスメント
  • 報酬の未払い

困った時は遠慮なく利用してみてください。

まとめ

今回はフリーランス新法について解説しました。

フリーランスはこれまで法律であまり保護されておらず、発注事業者との取引において、不当に不利益を被るケースも散見されました。

今回、この法律が定められることによって、通常の労働者と同等とまではいかなくても、フリーランスもある程度、保護されることとなりました。フリーランスの皆さんにとっては朗報ではないでしょうか。

ただし、従業員を使用しない事業者からの発注では、「書面等による取引条件の明示」以外の義務は発生しないことは注意が必要です。また、継続的ではない業務委託の場合は適用されない条項もあります

どういったケースにこの法律が適用されるかをしっかり押さえて、発注事業者の方とより気持ちよく取引ができる一助となれば幸いです。

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