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トラブルに巻き込まれないために!Web制作者が必ず知っておきたい法律・リスク

フリーランスの基礎知識

Web制作の現場で起きるトラブルの多くは、技術ではなく「権利」「責任」「契約」まわりで発生します。
サイトが多少動かないことは直せますが、著作権侵害や個人情報漏えいは取り返しがつきません。
しかも制作者は、知らないうちにリスクを抱えていることも少なくありません。

フリーランスとして、Web制作の知識はあっても、ややおろそかにされがちなのがこの法律上のリスクです。

しかし、ここをしっかり押さえておくことで、さまざまなトラブルに巻き込まれるのを未然に防ぐことができます。

この記事では、Web制作やWordPress案件に携わる方にぜひ最低限知っておいていただきたい法律リスクについて、特に「著作権」と「個人情報」に焦点を当てて、対策を解説します。

この記事の対象読者は以下のような方を想定しています

  • Web制作の仕事をしているが、今まであまり著作権や個人情報について学んでこなかった
  • 法律上のトラブルに巻き込まれないための基本知識を知りたい

この記事を読むことで以下がわかるようになります

  • Web制作者として押さえておくべき基本的な法律上のリスク
  • 著作権法に違反しないために留意すべきこと
  • 個人情報保護法がどういったケースに該当するのか

著作権とは?

著作権とは、一言で言うと「創作した人が、その作品をどう使うかを決める権利」のことで、創作物を創作した人に与えられます。その作品を無断でコピーしたり、使用したりされないように保護し、創作者が利用方法を独占できる「知的財産権」の一つです。

つまり、画像・文章・デザイン等はすべて「誰かの財産」であり、それを勝手に利用することはできないということです。

著作権ってどういう場合に生じるの?

著作権は、「誰かが創作したもの」について、「創作した時点」で自動的に発生します。申請等の有無に関わらず、創作物に対しては必ず著作権が発生する点に注意が必要です。

Web制作の現場で最も多いトラブルの一つが著作権に関するものです。

ロゴ、写真、文章、イラスト、UIデザイン、テンプレート等々、どのような形式であっても誰かが創作した時点で著作権が発生します。そのため、これら他人の創作物を勝手に利用することは禁止されています。

無料素材の落とし穴

無料・商用利用可の創作物なら使っても著作権侵害にならないよね!

実は、無料・商用利用可のものでも著作権侵害になる場合があるので、注意が必要です。

無料・商用利用可のコンテンツを利用している方も多いのではないでしょうか。しかし、無料素材であっても、以下のような条件がついていることがよくあります。

  • クレジット表記必須
  • 再配布NG
  • 加工禁止

こういった条件を守らずに使用すると、やはり著作権の侵害になってしまいます。

そのため、特に大事なのが利用規約をしっかり読むことです。利用規約はその創作物を利用する上での契約書と同じ。これをしっかり読んで順守することで、著作権トラブルを回避することができます。

文章のコピペによる著作権侵害

また、よくあるのが文章のコピペによる著作権侵害です。クライアントがコピペしてきた文章であっても、制作の関与の度合いによっては自分にも責任が及ぶケースもあります。

ですので、例えばクライアントから文章を受け取ってその文章をWebサイトに掲載する際は、その文章の著作権チェックをすると安全です。あるいは、「著作権管理はクライアント責任」と責任の所在を明確にしておくと、制作者は責任に問われないケースが多いです。

また、CMSでクライアントが勝手にコピペした文言を追加した場合、通常は制作側に責任は及びません。

正しい著作権対策

他者の創作物を利用する場合、商用利用可のものであればクレジット表記をつける等、規約に則って利用することが重要です。

また、図や文章を引用する場合は、以下の原則を守る必要があります。

  • 分量的にも、そして内容的にも自身のオリジナルコンテンツが主であり、引用されているコンテンツが従であること
  • その引用が必要であること
  • 引用されているコンテンツと、自身のオリジナルコンテンツが明確に区別されていること
  • 引用元が明記されていること
  • 引用するコンテンツに修正等を加えていないこと

他者の創作物を利用する場合は、著作権法に違反しないように、慎重に取り組む必要があります。

個人情報とは?

個人情報って名前とか住所のことだよね?

名前や住所も個人情報ですが、それだけでなく、「生存する個人を特定できる情報」であれば個人情報とみなされます。つまり、その情報から「誰のことか」わかる情報はすべて個人情報です。

個人情報は主に以下二つに分けられます。

  1. 氏名・生年月日その他の記述等により特定の個人を識別できる情報
  2. 個人識別符号が含まれる情報

もう少し具体的に見ていきます。

1、特定の個人を識別できる情報

これはいわゆる「個人情報」と聞いて思い浮かべるような情報で、名前や住所だけではなく、他の情報と照らし合わせることで個人を特定できる以下のようなものを含みます。

  • メールアドレス
  • 電話番号

2、個人識別符号が含まれる情報

個人識別符号とは、それ自体で特定の個人を識別できる「体」に関する符号や、国や企業が個人に付与した固有の番号のことです。例えば、以下のようなものが含まれます。

  • 顔認証、指紋、声紋、虹彩データ
  • DNA配列
  • 歯型情報
  • マイナンバー
  • パスポート番号、運転免許証番号

個人情報保護法

よく聞く個人情報保護法は、前述のようなあらゆる個人情報について、適切な取り扱いルールを定めた法律です。

現在は個人情報を1件でも扱うすべての事業者に適用され、個人情報の取得・利用・保管・提供に関するルールが決められています。また、漏洩時の対策についても定められています。

つまり、どんな小規模な事業者であれ、個人情報を扱う以上はこの法律を遵守しなければいけないということです。

責任が生じるケース

Webサイト運営において、一番個人情報に関する責任が生じる場面の一つは、「お問い合わせフォーム」です。

メールアドレス、名前、相談内容などは個人情報に該当するため、扱い方に責任が生じます。

例えば、以下のようなケースはすべて問題になってしまいます。

  • 問い合わせ内容の第三者への転送
  • メールアドレス漏洩
  • サーバーのセキュリティが破られ内容が覗ける状態

個人情報保護のため、以下のような対策は必須と言えるでしょう。

  • パスワードは安易に共有しない
  • アクセス権限は必要最小限
  • メール転送についてはクライアント確認
  • SSL化

プライバシーポリシー

個人情報保護法を順守していれば、プライバシーポリシーはいらないよね?

個人情報を扱うのであれば、プライバシーポリシーは事実上必須と考えた方が良いです。

個人情報保護法では、「利用目的を本人に知らせなければならない」と定めています(目的通知義務)。すなわち、個人情報を取得した際には、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、速やかにその目的を本人に通知する、ないしは公表しなければなりません。

それを手っ取り早くする方法が、プライバシーポリシーの開示です。

個人情報保護法では、他にもいくつかの明示・説明義務があり、それらをカバーするにもプライバシーポリシーは有用です。

また、顧客から信頼してもらうためにも、プライバシーポリシーを定め、開示することが重要と言えるでしょう。

明示的にプライバシーポリシーを示すことで「この業者はちゃんと個人情報を守っているのだな」「個人情報に対する意識が高いのだな」と示すことができ、信頼獲得につながります。

また、プライバシーポリシーに、個人情報の取り扱い方を明示しておけば、「このデータ勝手に使ってない?」と聞かれた際に「このポリシーに則ってきちんと扱っています」と反論しやすいです。

こういった観点から、プライバシーポリシーは事業規模が小さくとも必ず準備すべきと言えるでしょう。

納品後の制作物の著作権

先ほどは、他者の著作物の著作権について解説しましたが、今度は自身が制作したものについての著作権について確認します。

納品後の著作権は誰のもの?

Webサイトの文章や使用した写真、デザイン。これらはすべて創作物であり、著作権があります。

それでは、この著作権は制作した人のものでしょうか?制作を依頼したクライアントのものでしょうか?

お金払って作ってもらったんだから、当然著作権はクライアントのものだよね?

実はそうではありません。誰が資金を提供していようとも、契約で定めがなければ著作権は制作者に帰属します

これは著作権法上の基本ルールであり、「お金をもらって納品した=著作権も渡した」というわけではありません。

しかし実務では、この原則が正しく理解されていないケースが非常に多く、フリーランスにとっては思わぬトラブルの種になることがあります。

「著作権」と「利用できる権利」は別物

まず重要なのは、著作権そのものと利用する権利(利用許諾)は別だという点です。

契約がない場合でも、通常は「クライアントは、依頼した目的の範囲内で制作物を利用できる」と解釈されることが多いです。

たとえば、以下のような利用方法は、制作物を依頼するにあたりクライアントがそのように使うことが当然に想定されているわけですから、問題になりにくいです。

  • Webサイトとして公開する
  • 事業紹介に使う
  • 社内資料に掲載する

一方、以下のような、通常の想定を超える利用については、著作権侵害にあたる可能性があります。

  • 別会社に再配布する
  • 別サービスに流用する
  • デザインを加工して他案件に使う

しかし、実務上は「お金を払って作ってもらったのだから著作権もこちらのもの」とクライアントが誤認するケースは多いです。これは、法律的に誤りであっても、契約書がないとあとから説明しても納得してもらえないこともあり、トラブルにつながります。

契約で明確にすべきポイント

トラブルに巻き込まれないためには、あらかじめ契約書で以下のような著作権に関する事項を明確にしておくことが重要です。

  • 著作権の帰属先:制作物の著作権は制作者に帰属するのか、クライアントに譲渡するのか
  • 利用範囲(使用許諾の内容):どの用途・媒体・期間で使って良いのか
  • 二次利用・改変の可否:第三者への提供や、別案件への流用を認めるか
  • ポートフォリオ掲載の可否:実績として公開して良いかどうか

これらを明確にしておくことで、自分の制作物を想定外の用途で使われたりすることを防ぐことができます。

【コラム】©(マルシーマーク)とは

Webサイトの下部でよくみかけるこちらの「コピーライトマーク」©。これは、著作権法においてどのような役割を果たしているのでしょうか?

Webサイトに著作権があるってことを明示してるんでしょ?

その理解は半分正解です。確かに、©マークがあることで「この作品には著作権があります」と主張することができます。しかし、©マークがないからといって著作権が主張できないわけではありません。

日本においては、前述の通り創作物を創作した時点で著作権が発生します。従って、©マークがなくても著作権はきちんと保護されます

それでも©マークをつけるメリットはいくつかあります。

  • 著作権者の存在を明確にする:制作物に明確に著作権があると事前に警告することができます
  • 著作権者が誰かわかりやすい
  • 海外向けサイトでは有効:国によっては、このマークが重視される場合もあるため、国際的なサイトでは有効なこともあります。

結論、©マークはそれ自体で著作権を発生させるものではなく、日本では必須でもありませんが、著作権があるという意思表示や抑止力としては有効と考えられます。

つける義務はないが、つけておくと安全」と覚えておくとちょうど良いでしょう。

まとめ:法律知識はフリーランスを守る武器

今回は著作権法と個人情報保護法を中心に、フリーランスが気を付けるべき法律リスクについて解説しました。

Web制作の現場で起こるトラブルは、コードやデザインの技術不足だけでなく、「著作権」「個人情報」「契約」といった法律面の理解不足からも生じます。これらは一度問題になると修正ややり直しが難しく、制作者の信用や仕事の継続に大きな影響を及ぼしかねません。

著作権については、他者の創作物を安易に利用しないことはもちろん、無料素材であっても利用規約を必ず確認し、引用ルールやクレジット表記を正しく守る必要があります。

個人情報についても、問い合わせフォームなどを通じて取得した情報は、規模の大小に関わらず個人情報保護法の対象となります。適切な管理体制を整え、利用目的を明示するためにプライバシーポリシーを設けることは、法令遵守だけでなく、クライアントやユーザーからの信頼獲得にもつながります。

フリーランスとして長く安心して活動していくためには、技術力と同じくらい、こうした法律リスクへの意識が欠かせません。こういった基本を押さえて対処していくことが、自身を守る最大の武器になるでしょう。

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