海外ノマド生活には「突然の体調不良」という、誰もが一度は直面するリスクが潜んでいます。現地の病院はどこ?保険は使える?言葉は通じる?
いざというとき、準備ができているかどうかで、その後の数日間はまったく違うものになります。
我が家がメルボルンで経験した「高熱」と「虫歯」。その体験をもとに、海外で体調を崩したときどうすべきか、何を準備しておくべきだったかについて紹介します。
見落としがちな公的制度についても紹介しますので、ぜひ参考になさってください。
どうしたらいい?突然の高熱
メルボルンで生活し始めてから3週間たった頃、いつものように学校に息子を迎えに行くと様子が変です。帰宅して熱を測ってみると、体温計には「39.0」の数字が!鼻水や咳などの風邪症状は全くなく、ただただ体が熱くて目がトロンとしています。
慣れない土地での高熱に不安がよぎりますが、疲れが出たのかもしれないと思い、まずは1日様子を見ることにしました。
ところが翌朝、事態はさらに悪化します。

私まで39度の熱が出た……
親子揃って高熱で動けないうえ、メルボルンの家には日本でならすぐ手に入るポカリスエットやアクエリアスはありません。水すら買いに行けず、食欲もない。夫は仕事があり、夕方まで帰宅しません。
異国の地で孤立したような絶望感に包まれました。
救世主はママ友のアドバイスとパナドール
そんな時、息子のクラスメイトのお母さんからスマホに通知が届きました。「熱は大丈夫?困ったことがあったら言ってね。」という言葉に泣きそうになります。
彼女はすぐに、現地のリアルな医療情報を教えてくれました。
- オーストラリアの風邪には日本の薬は効かないことが多い
- CBDに日本語が通じる病院がある(その地図まで添付してくれた!)
- 病院に行ってもPanadol(以下:パナドール)を処方されて終わりということが多い
- パナドールはスーパーやドラッグストアならどこでも手に入るから、試してみては?
- パナドールは日本の解熱鎮痛薬より成分量が多いようだから、少量から飲んでみるとよい(注:必ずパッケージの指示や薬剤師のアドバイスに従ってください!)
これだけの情報を高熱でぼんやりした頭でもわかるように、丁寧に教えてくれたママ友には感謝しかありません。
CBDはメルボルンの中心地で、CITYとも呼ばれています。お店やオフィス、図書館(ハリーポッターに出てくるような素敵な図書館です)があり、我が家から15分ほどで行ける場所です。
パナドールは、オーストラリアでは「困ったらパナドール」と言われるほど一般的な解熱鎮痛剤。いつも利用する近所のスーパーにも売っていました。

服用してみると、高熱で夜眠れなかった私も息子も、朝までぐっすり眠ることができましたよ。
食欲がない時に救われた意外な食べ物
高熱で何も喉を通らない中、唯一食べられたのがこちら。息子のお弁当に時折持たせていたフルーツパウチです。キャップを開けてそのまま食べられます。

食感はゼリーというよりも、なめらかにすりおろした果物そのもの。ゼラチンで固めたプルプル感はなく、とろみのあるフルーツペーストのような商品です。
これを冷蔵庫で冷やしたものが、おいしくておいしくて…。親子二人、夢中で吸い込んだのは良い思い出です。
結局、息子は3日で平熱に戻り、すっかり元気になりました。
しかし、ここからが「大人のリアル」です。私の熱が下がったのは4日目。さらにその後は激しい喉の痛みと咳に数日間苦しめられました。
息子と比べて回復の遅いことに苦笑いしつつも、健康の有り難みを痛感した出来事でした。
この経験から学んだ高熱対策
突然の高熱を体験して私が強く感じたのは、以下の3点です。
- 食べられるものをストックしておく: ゼリー飲料やジュレ、アイスクリームなど、体調不良時でも摂取できるものを常備しておきましょう。元気な時にどんなものが口に合うか、試してみることをおすすめします。
- 「日本語OKな病院」を事前に把握しておく: 体調不良の時は調べる気力がありません。Googleマップにピンを立てておくだけで安心感が違います。
- 現地薬の知識を持っておく:スーパーや薬局でも買える定番薬の名前と作用、適切な服用量を知っておくことが大切です。日本の薬では効果が感じられないケースもあるので、現地に着いたらすぐに調べておくとよいでしょう。
なにより、体調不良の時は無理をしないことが一番の対策です。仕事の納期が迫っているときはクライアントに連絡し、スケジュールを調整してもらえないか打診してみましょう。
保険があっても痛い!虫歯に注意
私と息子の体調が回復し、平穏な日常生活が戻ってきた頃、今度は夫がこんなことを言い出しました。

歯が痛い、気がする…

えっ!?
頭をよぎったのは、現地の高額な歯科治療費です。オーストラリアの歯科治療は基本的に全額自己負担。知り合いはこちらで虫歯治療をした際、約30万円かかったと言っていました。
我が家はBupaという民間保険に加入していますが、治療費がどこまでカバーされるのかよくわかりませんでした。民間保険には年間上限額があり、さらに治療費の約40%は自己負担となります。(注:負担割合は保険会社やプランによります)
高額な治療になればなるほど、自分のお財布から出ていくお金がどんどん増える仕組みに、夫婦で真っ青になりました。

出国前に歯医者へ行っておけばよかったね
治療の予約はとれたものの・・・
なんとか日本人の歯科医が常駐している歯科医院に予約を入れることができたものの、診察日は10日も先でした。しかも、歯科医院は自宅から1時間ほどかかる場所にあります。
何度も通うことになったらどうしよう?この間も虫歯が進行していたらどうしよう?と、毎日ドキドキしていました。
そして当日。治療を終えた夫から連絡がありました。
- 虫歯が4個もできていた
- 良心的な先生で、一度で全ての治療を終えてくれた
- 支払いは6万円。そのうち4万円は保険適用となったため、2万円の費用負担で済んだ

よかった!
時間も費用もかかると思っていたので、心からホッとしました。
やはり、日本の公的保険制度は圧倒的に手厚いですね。どんなに高度な治療でも、全国どこでも3割負担で受けられる日本の保険がいかに優れたシステムか…。改めて日本の保険制度の素晴らしさを実感しました。
渡航前の歯科検診が大切
海外生活で虫歯で痛い目に遭わないためには、やはり渡航前に検診を受けておくべきです。日本での歯科検診はどんな保険よりも安上がりで確実な投資だと思います。
後から知ったのですが、長時間飛行機に乗ると歯のトラブルが起きやすくなるそうです。
「気圧性歯痛(航空性歯痛)」という言葉を聞いたことはありませんか?
飛行機が上昇して気圧が下がると、お菓子の袋はパンパンに膨らみます。それと同じ現象が、実は私たちの歯の中でも起きています。
歯の内部には「歯髄腔(しずいくう)」という神経が通る小さな空洞があり、気圧が下がるとこの空洞内の空気が膨張し、内側から神経を圧迫。すると、小さな虫歯や治療途中の歯が痛み出したり、詰め物が浮いたりすることがあるそうです。
歯の不調を特に感じていない場合でも、フライト前には必ず歯科検診を受け、万全の状態で飛行機に乗ることをおすすめします。
知っておくべき公的支援「海外療養費制度」
海外で高額な医療費に直面した際、多くの人が現地の民間保険やクレジットカード付帯の保険を頼りにします。しかし、忘れてはならないのが、日本の公的医療保険に備わっている「海外療養費制度」です。
これは、海外旅行中や滞在中に急な病気やケガで現地の医療機関にかかった際、申請により支払った費用の一部が払い戻される制度です。海外滞在中も日本の国民健康保険や社会保険に継続して加入していれば、原則として誰でも利用することができます。
また、この制度の大きな特徴は、適用範囲の広さにあります。今回のような歯科治療はもちろん、急な高熱による診察や検査、さらには不慮のケガによる手術など、日本国内で保険診療として認められている治療であればその多くが還付対象です。(注:治療目的で渡航した場合は対象外です。)
民間の旅行保険では歯科治療が対象外であったり、既往症に制限があったりすることも少なくありません。保険の隙間を埋めてくれる海外療養費制度は、海外で活動するフリーランスにとって心強い味方ですね。
申請には現地の医師による証明が必要
還付を受けるためには、帰国後に自治体や健康保険組合へ申請を行う必要があります。ここで最も重要なのが、現地での書類準備です。以下の2点は必ず医師に依頼し、作成してもらわなければなりません。
- 診療内容明細書(Attending Physician’s Statement)
- 領収明細書(Itemized Bill)
これらは各保険組合のウェブサイトから専用フォームがダウンロードできるため、事前に印刷して持参すると確実です。

我が家はこの制度をすっかり忘れていて、帰国直前に気づきました……
虫歯かもしれないという焦りと不安で、日本の公的制度への意識が完全に抜け落ちていました。結局、今から歯科医院に連絡を取って書類を用意する手間と時間、交通費を考慮して、今回はあきらめよう…となりました。
皆さんは我が家のような失敗をしないよう、パスポートと一緒に海外療養費の申請書類を持っていくようにしてください。
「もしも」に備えて海外ノマドを楽しもう
海外で自由に働き続けるためには、トラブルをゼロにすることよりも、トラブルが起きた時のダメージを最小限に抑えることが重要です。
親子で高熱にうなされ、夫の虫歯治療費に怯えた数日間。海外での体調不良は、想像以上に心細いものでした。しかし、事前の準備によって、そんな時でも心に余裕を持つことができます。
この記事で紹介した備えが、あなたの海外ノマド生活を支えるお守りになれば嬉しいです。
<もしもに備える安心の準備リスト」>
- 英語の医療メモ(既往歴やアレルギー、服用薬を英語でまとめてスマホに保存しておく)
- 病院(「日本語対応」や「24時間対応」の病院をGoogleマップにピン留めしておく)
- 動けない時を想定した食料品(食欲不振時でも手軽に栄養補給できるものを買っておく)
- 現地薬(現地で一般的な薬の名前と作用を把握しておく)
- 海外療養費の申請書類(書類を専用フォームから印刷し、診察を受ける際は忘れずに持っていく)
- 渡航前の歯科検診(特に気になることがなくても、念のため検診を受けておこう!)




