私たちを取り巻くお金の環境は劇的に変化しています。
特に昨今は押し寄せるインフレの波を生活の中で実感している方も多いのではないでしょうか。今はただ貯金をしているとお金が目減りしていく時代です。
【なぜインフレ時代には貯金をするとお金が目減りする?】
インフレが進むと、例えば以前は100円で買えていたものが150円払わないと買えなくなります。買うモノそのもの自体の価値は変わらないのに、より多くのお金を払わないとそのものを入手できなくなるわけです。従って、同じお金で買えるモノの量や価値が減るため、実質的に「お金が目減りする」状態になります。
国も貯蓄から投資へのシフトを進めています。投資については別記事で詳しく描きましたのでぜひご参照ください。
特に、この10月は食品の値上げと保険料の値上げが顕著です。
10月には、帝国データバンクによると2911品の食品の値上げが実施されました。これは、2024年で最多です。
また、火災保険も10月から値上がりしています。大手損保によると、全国平均で10%程度の値上げとなりました。昨今の自然災害の多発によるものですが、インフレと相まって家計への負担は高まるばかりです。
このような状況下では、お金の知識や情報を常にアップデートして、最適なアクションをとっていくことが大事ではないでしょうか。今回は、特にこの秋から変わるフリーランスにとっても重要なお金のことや制度について、FP2級を持つ筆者が解説していきます。
最低賃金の引き上げ
全ての労働者に適用される最低賃金。10月1日から、その額が順次全国平均で51円引き上げられます。この上げ幅は過去最大です。
例えば、東京都の最低賃金は時給1,163円です。前年比で50円アップ。しかし、最低賃金が上がってもまだまだ家計が苦しいと感じる人が多いでしょう。
地域ごとの最低賃金改定状況は以下よりご確認ください。
また、最低賃金はアルバイトやパートにも適用されますが、業務委託契約には適用されません。そういう意味では、フリーランスの場合、これまでと同じように仕事を受けていたら最低賃金の上昇の恩恵を受けられません。
案件参画の際や、サイト制作費の見積を出す際に、自身でしっかりと時給換算した料金が最低賃金を下回らないように計算しながら対応していく必要があるでしょう。
ただ、最低賃金が上昇した分、取引先からは理解が得られやすいとは言えます。
社会保険の適用範囲拡大
10月から、パートやアルバイトなどの短時間労働者への社会保険適用範囲が拡大されます。従来は「従業員数が101人以上の企業」が対象でしたが、今回これが「従業員数が51人以上の企業」に拡大されました。
従って、従業員が51人以上の企業で働いている場合、パートやアルバイトであっても、要件を満たせば社会保険、すなわち「健康保険」、「厚生年金保険」、「介護保険」の三つが適用されます。
【社会保険が適用になるための要件】
・週の所定労働時間が20時間以上であること
・賃金が月額88,000円以上であること
・2ヵ月を超える雇用の見込みがあること
・学生ではないこと
社会保険が適用されると、さまざまなメリットを享受することができます。例えば、健康保険は国民健康保険よりも安く済みます。
厚生年金保険に加入すると、以下のようなメリットがあります。
- 将来受け取れる年金が増える
- 「障害年金」の適用範囲が拡大する
- 「傷病手当金」や「出産手当金」の支給対象になる
デメリットを挙げるとすると、給与から社会保険料が天引きになるため、手取りがその分減ってしまう点です。しかし、健康保険料は会社と折半になるため、その分、結果的に安くなります。
メリットとデメリットがありますが、多少手取りが減ってもメリットを享受したい方には、今回の適用範囲拡大は有利に働くといえます。
社会保険の適用拡大については、厚生労働省が以下の特設サイトを設けています。詳細を知りたい方はご参照ください。
リスキリングの公的支援拡充
DX化が進む現在、DX化に必要な専門性やスキルを持った人材の不足が顕著です。
【DX化とは】
DXとはデジタルトランスフォーメーションを意味し、デジタル技術を導入することで業務効率や業務フローの改善、さらにはビジネスモデルの変革まで実現していくことを指します。
そういった状況に対応するため、リスキリングが注目されています。
【リスキリングとは】
リスキリングとは、職業に関する能力の再教育や再開発をすることで、新たな業務などに適応できるように、必要なスキルを習得することを指しています。
リスキリングを推進するために、厚生労働省では10月から「教育訓練給付」の給付率を高めます。
【教育訓練給付とは】
教育訓練給付とは、働く人々の能力開発やキャリア形成を支援を目的とし、スキルアップや資格取得などのために対象となる講座を受講した人を対象に、受講費用の一部を給付する制度です。
教育訓練給付の対象となるのは、雇用保険に加入している人及び加入していたが離職して一年以内の人です。
もし対象となるなら、本制度を通してスキルアップを図るチャンスと言えるでしょう。
給付の対象となる講座や、給付される費用など、教育訓練給付の詳細を知りたい方は以下の厚生労働省のサイトをご参照ください。
フリーランス新法の施行
フリーランスの安定的な労働環境のために制定されたいわゆる「フリーランス新法」がいよいよ来たる2024年11月1日から施行されます。
取引先に対して相対的に立場が弱くなる傾向にあるフリーランスを保護することを目的としたこの法律。例えば、書面等による取引条件の明示や、報酬の支払い期日の設定などが義務化されます。
これにより、依頼主に対して立場が弱くなりがちのフリーランスが以前よりしっかり保護されます。
フリーランス新法について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
この法律が、11月1日から施行される、つまり実際に効力を持つようになります。ぜひ内容をしっかり理解して、取引先との交渉でも役立てたいところです。
以下は厚生労働省のフリーランスのためのページです。こちらにも詳細が掲載されていますのでご参照ください。
まとめ
今回は2024年秋から変わるお金のことや制度のことについて、FP2級の資格を持つ筆者が解説しました。
なんとなく貯金をしていれば安泰だった時代は過ぎ、今は積極的にお金に関する情報をアップデートして対策をとっていくことが必須になりました。特に、自由度が高い分、自己責任の範囲も広いフリーランスにとっては、情報はさらに重要になっています。
新しい制度をしっかり確認して、有効活用できるものはどんどん取り入れてみてください!