急に涼しくなり上着が一枚必要な季節になってきました。テレビCMではお鍋のつゆに始まり、いよいよおせち料理の予約まで…年々あっという間に1年が過ぎて行きますね。
この1年で副業にチャレンジした人も、独立しフリーランスとして案件に向き合ってきた人も、そろそろ1年間のお金の流れと領収書が気になる季節ではないでしょうか?
個人事業主、自営業、フリーランスにとって、避けては通れない確定申告。
どうしても苦手意識が先行して、期限ぎりぎりになって、慌ててバタバタと準備をする人も多いと思いますが、今年はぜひ、今から準備を始めてスムーズな申告をしませんか?
年内に、業務だけでなく、お金の流れも整理しておくと、すっきりとした年越しを迎えることが出来ますし、お正月明けの業務も気持ちよくスタートできますよ!
今回は、スムーズな確定申告のために必要な3つのポイントをご紹介いたします。
確定申告とは?
確定申告とは、1月1日~12月31日までの1年間で得た所得に対して掛かる税金(所得税)を計算し、お住いの管轄の税務署に報告・納税する手続きをいいます。
所得税額の計算
所得税額は、個人事業主、自営業、フリーランスで働く人が得た事業所得や、会社員の人が得た給与所得、今年退職をして退職手当などを受け取った場合は退職所得などの所得合計から、事業上必要な経費、医療費や社会保険料等の控除を差し引いた残りの課税所得に、既定の税率を適用して計算します。
所得税額 = 課税所得金額(収入 ー 経費 ー 各種控除)× 税率 ー 控除額
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超 | 40% | 2,796,000円 |
所得税の税率や各種控除の種類・仕組みは、国税庁のホームページから確認することができます。
確定申告の期間
確定申告の期間は、通常2月16日~3月15日までです。
個人事業主、自営業、フリーランスで働く人は、事業所得がありますので、基本的には確定申告が必要ですが、先述の所得税の計算で、課税所得金額(収入 ー 経費 ー 各種控除)が差し引きマイナスの場合は、確定申告の義務はありません。
確定申告の方法
確定申告の書類提出の方法は、お住まいの管轄税務署へ持参する他、郵送や電子申請(e-Tax)があります。
確定申告の時期になると、税務署にも確定申告用のコーナーが設置されたり、確定申告のために土日祝日も開いていたりするので、初めての確定申告で、税務署職員の方に聞きたいことがある場合は、税務署への持参が一番かんたんですね。
お住まいの管轄税務署が遠方にある場合や、混雑を避けたい場合などには、郵便局から書留や簡易書留、レターパックを利用して、郵送で提出することもできます。
青色申告特別控除を最大限利用したい場合や、24時間好きなタイミングで申告を済ませたい場合は、e-Taxによる電子申告がおすすめです。
確定申告書類は 信書(特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書)です。宅急便・ゆうパックは信書に利用することはできませんのでご注意ください。
個人事業主が利用できる「青色申告特別控除」
確定申告には、青色申告と、白色申告の2種類があります。
青色申告では、収入や必要経費など事業に掛かる費用の取引状況を、複式簿記の帳簿で管理が必要です。
確定申告の際に、貸借対照表と損益計算書を添えて「青色申告決算書」を提出することで、最大65万円の青色申告特別控除が受けられます。
白色申告では、複式簿記の帳簿管理は不要ですが、売上や仕入、経費などを項目ごとに集計した「収支内訳書」の提出が必要です。
書類提出がシンプルではあるものの、確定申告の準備にかかる手間はさほど変わらず、青色申告特別控除のような節税のメリットはありません。
青色申告特別控除を利用する場合の所得税計算
事業所得がある個人事業主・フリーランスが、青色申告特別控除を利用した場合の所得税を計算してみましょう。各種控除は基礎控除のみを適用してみます。
※基礎控除
合計所得金額が2400万円以下の個人事業主は一律48万円の控除が受けられます。
- 事業収入 500万円
- 必要経費 100万円
- 基礎控除 48万円
- 青色申告特別控除 65万円(複式簿記での管理かつe-Taxによる申告を利用)
① 課税所得金額(収入 ー 経費 ー 各種控除)
500万円ー100万円ー48万円ー65万円=287万円
→所得税率は10%
②課税所得金額 × 税率 ー 控除額=所得税額
287万円×10%ー9万7500円=18万9500円
このように、①課税所得金額が算出できれば、だいたいの所得税額を前もって計算することができます。各種所得控除を漏れなく利用することで、さらに所得税を節税できますので、医療費控除や社会保険料の控除など、何が適用できるかを国税庁のホームぺージで確認しておきましょう。
確定申告に必要なもの
確定申告では、確定申告書と「収支内訳書」または「青色申告決算書」、各種控除を受けるために必要な証明書一式を提出します。
必要なもの | 備考 |
---|---|
確定申告書 | 電子申告の場合は紙の申告書は不要です。 個人事業主・フリーランスは「確定申告書B」を使用します。 |
収支内訳書 または 青色申告決算書 | 個人事業主・フリーランスは事業所得がありますので 申告方法により、いずれかが必要です。 |
各種証明書 | 保険料控除や医療費控除の明細など添付書類として必要です。 |
源泉徴収票 支払調書等 | 給与収入がある方や ライターやインストラクターなどの業務で 源泉徴収が行われている場合は 確定申告書への記載の際に必要です。 |
マイナンバーカード または 通知カード | 確定申告書へマイナンバーを記載の際に必要です。 |
金融機関の口座 | 還付金がある場合は受け取り口座として必要です。 |
青色申告制度を利用するの場合は事前の届出が必要
青色申告制度を利用する場合は、所得税の青色申告承認申請書を事前に税務署へ提出しておく必要があります。何も手続きをしなければ白色申告になります。
開業届を提出する際に一緒に青色申告承認申請書も提出をしておくのが便利ですが、事業を開始した日から2ヶ月以内であれば、青色申告は可能です。
青色申告承認申請書は、一度提出すれば、翌年からは提出する必要はありません。
電子申請(e-Tax)をする場合はマイナンバーカードが必要
最大65万円の青色申告特別控除が受けられる電子申請(e-Tax)ですが、確実に本人からの申請であることを証明するために、事前に「開始届出書」を提出して、利用者識別番号を取得する必要があります。
また、取得した利用者識別番号を利用して、確定申告を行う場合は、マイナンバーカード、カードリーダーまたはマイナンバーカードを読み取れるスマートフォンが必要です。
マイナンバーカードをこれから申請・取得する場合は、申し込みから実際にカードが届くまでに1ヶ月ほどかかります。
他にも、カードリーダーをパソコンに設置したり、e-Taxのログイン環境を整えたりと、事前の準備が必要になるので、電子申請(e-Tax)を希望しても、すぐに申請が出来るわけではありません。
確定申告をスムーズに進めていくためにも、早めにマイナンバーカードを準備しておくと良いですね。
参考リンク)令和3年分確定申告(令和4年1月~)からスマートフォンとマイナンバーカードを使用して申告できるようになりました
簿記や会計の知識がない場合は確定申告ソフトがおすすめ
国税庁のホームぺージにも、確定申告書類の作成コーナーがありますが、クラウド確定申告ソフトを利用することで、確定申告書、青色申告決算書、貸借対照表と損益計算書などの必要な書類を自動で作成してくれる上、電子申請(e-Tax)にも対応しているので、とても便利です。
複式簿記の仕訳は、簿記や会計の知識がないと、どの科目で管理したらよいか分かり辛いですが、クラウド確定申告ソフトは、日々の事業資金の流れをお小遣い帳のように入力していくだけの、シンプルな画面と操作なので、誰でも迷わず利用できます。
クラウド確定申告ソフトは、様々なメーカーからリリースされていますし、無料でお試しもできますので、積極的に活用していきたいですね。
参考リンク)国税庁の確定申告等作成コーナー
参考リンク)マネーフォワードのクラウド確定申告
参考リンク)弥生会計のやよいの確定申告
参考リンク)Freeeの確定申告ソフト
今から始めて欲しい3つのポイント
確定申告の時期になってから、慌てて準備をするのではなく、日ごろからルーチンワークに取り入れていくことで、確定申告の手続きはとてもスムーズになります。
11月スタートでも大丈夫!今から始めて欲しい3つのポイントをご紹介します。
日々のお金の流れを帳簿に記帳する
クライアントからいただく報酬や、クレジットカードで買ったノートパソコンの代金、携帯電話の通話料、お打ち合わせに使用したレンタルスペース代、交通費など、日々のお金の流れはこまめに記帳しておきましょう。
必要経費を漏れなく計上するためにも、毎月1回、事業の締め日を決めて管理していきたいですね。
1年間のお金の流れをまとめて記帳するのは大変ですし、何より記憶が定かではなかったり、レシートや領収書を紛失してしまったりと、間違いの元になります。
毎月のお金の流れを把握することもできますので、面倒がらずに定期的に記帳しましょう。
領収書や明細を月ごとにまとめる
必要経費の領収書や、通信料・通話料、カードの利用明細などは、月ごとにファイリングしたり、クリップでまとめたりして、ご自身がわかりやすい管理を行いましょう。
青色申告の場合、領収書は「現金預金取引等関係書類」として、保管期間は7年間です。
確定申告の際に提出が不要な書類も、記載内容に確認事項がある場合は、税務署からの問い合わせに対応し開示が必要になりますので、なくさないように大切に保管してください。
各種控除証明書を取り寄せる
生命保険に加入している人は、生命保険会社が発行する「生命保険料控除証明書」や、国民年金保険料や国民健康保険を支払っている人は、日本年金機構が発行する「社会保険料控除証明書」などが必要です。
毎年11月~12月上旬くらいまでに各社より郵送されますが、被保険者からの依頼で発行・送付されるものもあります。また、誤って紛失してしまった場合は、再交付申請ができる場合もあります。
ご自身が受ける所得控除に必要な証明書をあらかじめ確認しておくようにしましょう。
各種控除の一例 配偶者控除/配偶者特別控除/扶養控除/社会保険料控除/生命保険料控除 小規模企業共済等掛金控除/ふるさと納税寄付金控除/医療費控除
まとめ
個人事業主・フリーランスで働く人は、自ら所得税を計算・申告しなければなりません。
確定申告の間際になって慌ててしまわないように、11月の今から少しずつ、事業のお金の流れを整理していくことが大切です。
そして、漏れなく必要経費を計上して、しっかり節税もしていきましょう。
この記事が、初めての確定申告を控えた個人事業主・フリーランスのみなさんの、疑問解決の手助けになれたらうれしいです。